「我が艦隊に補充兵がやってきた。
といっても、ただの補充兵じゃあない。
なんでも、そいつが部隊長の隊員は誰一人として死んでいないそうだ。
そのほかにも、各戦艦ごとに砲撃者四名、整備者六名“も”配備した。
期も熟してきた。

・・・そろそろ本格的な作戦が始まる。

気持ちの整理をしておけ!


・・・以上だ。」

ネオ・ジオン残党の最大の艦隊、コードネームファルシオンの全ての戦艦にこのコールが響き渡った。

「ったくよぉ、人手不足だってのに、計十人しかこねぇんじゃないか!」
「まぁ、人がくるだけでも感謝しなきゃ、な。」

そう、あのアクシズを止めたアムロ大尉が、連邦に属していたのが原因で、
民衆のほとんどが連邦を信仰するようになったのだ。

しかし、連邦を良く思わない者も当然居て、その者をかき集めて今の組織は成り立っている。

「いや、十人じゃあない、十一人だ。」
部隊長のガイ中尉が答えた。
「あ!ガイ中尉!あの、もしかしたら、補充兵が、うちの戦艦に・・・!」
「その通りだ。」

金髪の男が突然横から口を出した。

年は20代の中盤あたりに見えるのだが、年齢に分相応な風格を漂わせていた。

「あ、あなたは、新しく入る補充兵!?」
「その通りだ。今日から私が部隊長になる。至急、皆を集めてくれ。」
「は!了解いたしました!!」

そう言うと、ガイ中尉は、すぐに収集をかけた。

「今日から私が部隊長だ。
名前は・・・、Sazabiとでも呼んでもらおう。
もちろんこれは偽名(コードネーム)だ。」
兵士たちのひそひそ話が聞こえる。

(偽名を使えるほど偉いやつなのか!?)
(どんなわけがあるんだ?何故あの偉大なるMSの名前にした???)

が、それを無視してSazabiは話を続ける。
「諸君らも知っていると思うが、私の部隊はまだ一人とて死んでいない。
そのため、仲間からは『御神体』とも呼ばれている。
これから、戦いは辛いと思うが、よろしく頼む。」

「あ〜、こちらからもよろしく頼む。
我がファルシオンは、残党最大と言えども、
ムサカ級四艦、レウルーラ級一艦と少し力不足だ。
色々大変だとは思うが、戦果をあげてくれるのを期待している。」

と、ゼノン艦長が答えた。



「Sazabi大尉!どのMSにのりますか?・・・と言ってもギラ・ドーガぐらいしかありませんが・・・。」
「いや、私のMSはもう用意してある。」
と、右の窓を指差す。
整備兵がその窓を覗いてみると、そこには、
かつてシャア・アズナブルが乗ったサザビーが!

しかし、そう見えたのは一瞬のみで、図体は一回り大きく、細部も全く異なる。

だが、それでもこれをサザビーに見間違えてしまう、何かがあった。
「大尉!これはとうしたんですか?」
大尉が少し苦笑する。
「いや、これはヤクト・ドーガを勝手に改修したものだ。
前の部隊でもこれに乗っていた。
名前は・・・、そうだな。付けるとしたら、サザビーD(ドーガ)って所だな。まぁ、“D”とでも呼んでくれ」

「改修・・・?」
整備兵は耳を疑った。
広範囲に動くモノアイ、腹部にあるビーム砲、
増設されたジェネレーター。

どうみても改修したとは思えない。
それも、MS乗りが。


と、その時コールが艦内に響き渡る。

「敵襲!」
と艦長が一喝。そしてすぐオペレータに連絡を入れる。

「とうとう見つけられたか。・・・今まで運が良すぎたか!

・・・逃げ切れるか?」

「この距離だと・・・厳しいですね。逃げ切るのは無理です。」

ゼノンは少し顔をしかめ、舌を軽く打つ。

「うむ・・・。よし、第二種戦闘配備!操舵手!回避運動怠るなよ!」

すぐさまパイロットがMSドッグに駆けつける。
「Sazabi大尉、出れますか?」
ガイ中尉が問う。
「ああ。サザビーDは大丈夫だ。
いつでも行ける。」

Sazabi大尉は答えた。

「敵機はジェガン級6機、クラップ級2艦です!」

スピーカーを通して聞こえるオペレータの声がMSドッグにこだまする。
「この程度の戦力でやり合おうとはな!」と、すぐに強気の野次も入る。

そんなやりとりの間に、出撃の準備は完了していた。


「カタパルト接続完了。
ジェネレータ出力――80%。
サザビーD、出るッ!」



ブースターの勢いとともに、サザビーDは宇宙へと飛び出した。
しかし、只のMS乗りが改修しただけのMSは驚くべき早さを出していた。
下駄(ベースジャバー)をつけているギラ・ドーガと同じぐらいの速さで前線へ飛び出している。
いや、ギラ・ドーガより早いぐらいだ。

しかし、まだ来たばかりのSazabiについていく者はおらず、
兵士は皆ガイ中尉を始めとする部隊長の後についた。
Sazabi大尉も速度を落としそれに続く。

「ブースターを出しすぎたんじゃあないのか?
ENは残ってるか?ジェネレーターは落ちていないか?」
とガイ中尉は問う。
「ちょっと出しすぎたが・・・・それほど問題ではない」
と大尉も答える。口元は笑っていた。

その時、戦場に光が走る。

艦砲射撃が始まったのだ。

「さて・・・お手並み拝見といきますかな、大尉。」
ガイ中尉が軽く皮肉を込めて言い、
「こちらこそどの程度か見させてもらおう!」
と返した。


『敵は量産型MSと言っても、十分に性能が高い。
一撃しか相手の攻撃を受けなくてもでも当たり所によっては倒されてしまう危険性もある。

が、それは敵も味方も同じ。
それを悟ったものがMS戦を制すのだ。』

それが、部下に対するガイ中尉の口癖だった。
現に、ガイ中尉は二機のMSをヒット&アウェイと呼ばれる戦法を常の頭の中に入れて戦ってきた。

「Sazabi大尉殿はまだ一機も倒していないか・・・・。」
ガイ中尉は落胆の意味をこめた独り言を言う。

が、その時、死角からジェガンが突如現れる!

「なっ!?」

ジェガンはビームライフルをかまえ、後は引き金を引くだけだ。この至近距離では外しようがない。
「一瞬の隙、か・・・。」
ガイ中尉はその一瞬で死を悟った。そして、ビームライフルは放たれた。


が、ガイ中尉のギラ・ドーガと、ジェガンの間に、突如MS割り込んできた。

それは深紅に輝いており、美しささえ感じられる。

そして素早くビームライフルの射程上に移動し、ギラ・ドーガをかばう形でビームを左腕で受け止めた。

左腕がビームライフルの光に焼かれていく。


「な!?」
今度はジェガンのパイロットが叫ぶ。
「なんだと!?」
つられるように、ガイ中尉も声を出す。

「――甘いな」
サザビーDは右手でビームトマホークを引き抜き、胸に突き刺す。そして横に薙ぐ。
そして、素早くその場から離れていく・・・・・。


閃光を残し、ジェガンが宇宙の闇の中へ消え入った。


ガイ中尉は一瞬何が起こったか分からなかった。
が、自分は生きている。
そして、徐々に理解していき、どんな状況か分かるのに数秒かかった・・・・

そして撤退命令が出た頃。

ガイはSazabi大尉に通信を入れた。

「Sazabi大尉、すまなかった・・・・。
自らの命も危ない状況下で・・・・。
礼を言おう・・・・。

だが・・・」

ガイ中尉は目を強め、

「だが、この借りはいつかかえさせてもらおう!」

「頼もしいな・・・・。」
Sazabi大尉はぼそりと呟くと、敵艦の方へ向かっていった・・・。





「おい!お前も見てたろ!!!
おれのMSの足がぶっ飛んで、狙い撃ちにされそうになった時、
逆にSazabi大尉が狙撃して、俺を艦まで運んでいったんだ・・・・。
あんな状況下で、だぜ?」
「俺も、ジェガンとタイマンになった時、サザビーDがかすめたその直後、ジェガンがぶっ飛んだ!!
すれ違い様にきったんだろうけど、ありゃあ見事だったぜ・・・。」

兵士達がわいわいと騒ぐ。

ガイ大尉は、
「Sazabi大尉の信頼はこの一戦だけで大分厚くなったな・・・・。
また俺も補佐に回る・・・だろうな。」と悟った。
だが、
「あの人の補佐になれるのも光栄だな・・・・。」
とも思っていた。



そして、Sazabi大尉が戻って来た。
負傷したギラ・ドーガを二体かかえて、だ。

「あ〜、全員揃ったか?」
突拍子にゼノン艦長が言う。
「Sazabi大尉、ご苦労だった。
戦果もそうだが、大尉の功績は大きい・・・。
機体の損失はそれなりにあるが・・・パイロットは全員無事に帰っている。
さらには、相手の艦隊に打撃を与え、撤退させた。」

少しの間、沈黙する。

「おい、お前ら!
Sazabi大尉がこの艦所属の隊の隊長で異議ねぇな?」

「も・・・もちろんであります!!!」
ほぼ全員の兵士が答える。

「いい返事だ。よぉし、決定だ。
って事だ、Sazabi大尉、よろしく頼む。詳しくはガイ中尉から聞いてくれ。」

と、ゼノン艦長は子供をほめるかというように言うと、デッキの方に去っていった・・・。

 

 


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