「あの時の事は、まだ忘れてないよ
 あの時から、君は輝いて見えた」

 

――――Wedding anniversary――――


 

ある年のある冬のある昼下がり。

「ねーえー!遊ぼうよー!

雪が降ってるよ〜!!」

僕、は家の前からめいっぱい叫んだ。

暫く経たないうちに、彼女が出てくる。

「わぁ・・・・!」

彼女は目を輝かせ、はにかむように笑った。

ここら辺では雪が降ることが珍しいのだ。

僕、自身もここまで一気に降っているのを見たのは初めてだった。

そして、初めてだったからこそ、・・・彼女と一緒に見たかったのだ。

 

暫く二人ではしゃぎ周り、疲れた頃合いに一緒に座り、雪を手のひらに集めた。

しかし、彼女は手の温かさですぐに雪が溶けてしまった。

僕、は手袋をしていたので集められた。

僕、は手袋をかたいっぽ、彼女に貸した。

「ありがとう!」

その時の彼女の笑顔は、雪を見たときよりも輝いていた。

――――僕、にはそう見えた。

 

 

******

 

「ねぇ、何読んでるの?」

“僕”が“俺”に変わった後のある年のある春の昼休み、彼女は話しかけてきた。

「そうだな・・・敢えて言うならば、

・・・・・人生の勉強のための本、かな」

我ながら気の利いたジョークだと思う。

それって答えになってないじゃん、という彼女の言葉を聞き流しつつ、

無造作に今まで読んでいた本――“タイムスリップ”と言う名のSF小説――を机の中にしまい込んだ。

「で、何か用でもあるのかな?

・・・言っておくが俺もまだ宿題は終わってないぞ」

そう俺が聞くと、彼女は首を軽く振り、

「いや・・・特にこれといって用があったワケじゃないんだけど・・・

ううん、いいや。なんでもない。」

やっぱり何か用があったのでは、と思いつつ席に深く座り直した。

ふぅ、と一息つき、外を眺めた。

 

――――なにやってんだろ、俺。

外でバレーだかサッカーだかルールが曖昧なスポーツを見つつ、独り呟く。

「え?――――なんか言った?」

きーんこーんかーんこーん。

と、彼女が答えるのと同時にチャイムの音が鳴り響く。

「いや、なんでもない。」

「あ、もう私いかなくっちゃ」

二人が言ったのは同時だった。お互いに声をかき消し合った。

そして彼女は自分のクラスへと戻っていく。

 

・・・・なんだかなぁ。

俺は次の授業――どうしても眠くなる国語――の用意をしながら、また呟く。

そう言えば、漢字の小テストがあるんだっけな。・・・めんどくさいな。

 

まだ新しいクラスにみんな馴染めていないのか、授業中も静かだ。今のところは。

――――まぁ、あと2,3ヶ月もすれば元通りの宴会場みたいな賑やかさになるんだろうな、

などと考えつつ、やっぱり眠くなってしまう。

良い子守歌だな。

と、国語の先生の話を揶揄し、眠りに就く。

 

 

*****

 

みーんみんみんみん・・・・。

蝉の声が俺の眠りを妨げる。

容赦なく照りつけてくる陽射し。

永遠に洗濯物が乾かないのではと思わせるほどの湿気。

それらは、どんな目覚ましよりも効果があった。

「あぁ・・・頭がいてぇ・・・」

 

ある年のある夏のある朝。

 

俺は又、いつも通りに目を覚ます。

汗でびしょびしょになったシャツを脱ぎ、

「・・・・はぁ。」

一息つく。

最近、俺は虚心になる。

原因は、もうこの夏休みに気付いた。気付いてしまった。

――――“彼女”に会えないからだ。

俺はいつ頃からか、はっきりと分からないが、

・・・・・彼女を好きになっていた。

 

 

だが、この夏休み中、

勉強漬けの俺と、(本来は引退しなければいけないはずなのだが)部活漬けの彼女が会えるはずもなかった。

電話も、する勇気が無い。

第一、学校で少し話をする程度ではないか。

 

「・・・・はぁ」

俺は又溜息を吐き、渋々服を着て、飯を食うため階段を下りていった。

時刻は、10時を少し過ぎた頃だった。

 

*****

「・・・・・」

俺は唾を飲み、息を止め、電話のボタンを押した。

一回躊躇い、最後のボタンを押せなかったが、

深呼吸を一回し、もう一度唾を飲み、一気に押した。

彼女に、電話をするために。

 

ある年のある秋。

俺は、自宅のベッドの上から、受話器を耳に当てた。

携帯電話ではなく、敢えて自宅の子機から電話をかけた。

彼女が、携帯電話をもっていなかったからだ。

特に関係は無いと思うが。

「ぷるるるるる・・・・ぷるるるるるr」

2回目の呼び出し音が鳴りきらずに、がちゃ、と受話器を取る音が聞こえてきた。

びくっ、と体が震える。

「もしもし?」

彼女の声だった。一回胸を撫で下ろし、それからもう一度緊張し、

「もしもし、俺だけど」

電話かけてくるなんて珍しいね、とか、最近髪切ったの気付いてる?とか、

特に当たり障りの無い会話をした後、俺は、言った。

「話があるから、今から神社に来てくれないか。」

彼女は少し困惑したようだが、了承してくれた。

そして電話を切り、大きく一息吐く。

 

さて、俺は、これから大仕事をしなくてはならない。

――――彼女への告白、だ。

 

・・・俺は、決心した。


もう遅いかもしれない


けど、君にこの想いを伝えよう、

もう溢れてしまいそうなほどいっぱいな、この想いを、

伝えよう、と。

 

俺は、すぐに家を飛び出し神社へ向かった。

服装は秋にしては薄手で、少し寒かった。

やっぱりマフラーはしてくるべきだったな、と軽く舌打ちする。

 

暫くして、彼女は来た。

いつも通りの彼女だ。

来るの早いね〜、や、もう大分寒くなってきたね、と話した後、彼女は、

「なんでこんなところに呼んだの?」

と言ってきた。

俺は、言わなくては、いや、伝えなくては、と思った。

しかし、彼女の返事が、怖かった。

でも。

俺は、彼女の目だけを見つめ、

 

震えた声で君に言った


「ずっと好きでした、付き合ってください。」と・・・

俺の心から、

何か重いものがスッと抜けていった気がした
俺は、目をつぶり、うつむきながら君の返事を待った

俺にとっては非常に長く感じられた時間が流れ、

やがて、彼女の返事が来る。

「うん・・・」

その一言が俺を暗闇から、光へと導いた

それから君は言ってくれた


「私も、ずっと、同じ気持ちだった」


俺は、涙をこらえながら
「ありがとう・・・。

――――これからは、ずっと、一緒にいよう」
そう言った。

 

*****

ある年のある春の日の日曜日。

「・・・・・ん?」

時計を見た。

どうやら、椅子に座りながら軽く寝てしまったらしい。

最後の記憶から、1時間進んでいた。

それにしても、懐かしい夢だったな。

軽く伸びをしたおかげですっかり目が覚めてから、思う。

もう夕飯なのか、何やらいい匂いがしてきた。

台所に向かう途中、ふとカレンダーを見る。

赤丸でチェックがされていた。

「そうか、今日は・・・・。」

誰にともなくそう呟き、ある決心をする。

 

俺、があのときに言った、あの言葉を贈ろう。

今日が、特別な日だから。

 

“俺”から“彼女”へ。

「君の事、ずっと大切に思ってるよ、今も昔も、これからもずっと
一緒にいようね、どんなに辛いときでも、一緒に支えあっていこう。」

 

 

カレンダーの赤丸の下には、「結婚記念日」と書かれていた。

 

                              ――――fin

 


 

小説って、書くのに時間がかかりますけれど、楽しいんですね。

と思ったりする今日この頃。

疲れました。

地味に手直しがしてあったりします。

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